北九州市平和のまちミュージアム
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    学芸員日記

    軍事郵便を読む ~戦地と内地をつなぐ唯一の便り~

    2022/09/23

    Vol.34 令和4(2022)年9月23日

     先日、寄贈いただいた約80通の軍事郵便の整理を終えました。軍事郵便とは、戦時中、戦地に派遣されている軍人などから発送された郵便物及びそれらの人宛に内地(ないち)(日本本土)から送られた手紙のことを指します。日本では1894(明治27)年、日清戦争の始まる直前に軍事(ぐんじ)郵便(ゆうびん)取扱(とりあつかい)細則(さいそく)が定められました。原則として、戦地から出す郵便物は無料で取り扱われ、戦地宛に出す手紙は正規の郵便料金が徴収されます。戦時中において軍事郵便は、兵士と家族や知人がコミュニケーションを取る唯一の方法であり、年間平均4億通のやり取りがされていました。

     寄贈いただいた軍事郵便の中にも、「近頃便りがなくどうしているか考えていた」、「毎日手紙を待つばかり」など、内地からの手紙を待ち遠しく思っている様子が伺えます。一方、内地で暮らす家族にとっては、兵士の生存を確認できる手段でもありました。

     軍事郵便の整理で大変なことは、一にも二にも解読です。ずっと仕舞い込んでいた書類等を取り出すと、紙が劣化して黄ばんでいたという経験が皆様にもありませんか。77年以上も前の資料、かつ、当時の決して質が良いとは言えない紙は、取り扱いに注意を払います。それに加え、インクが薄くなっているものや滲んでしまっているものも散見され、さらには、旧字体で走り書きされているものが多く、解読に困難を極めます。

     しかし、軍事郵便を読むことで、当時の状況を知ることはもちろん、その人の生きた証に触れることができます。当ミュージアムでは、現在展示している軍事郵便の他にも、多数の軍事郵便を所蔵しているので、皆様にご覧いただけるよう整理を進めていきます!

    (学芸員M)

    【参考文献】

    新井勝紘「軍事郵便のもつ“歴史力”に魅かれて:その収集・保存・公開・研究について」『昭和のくらし研究』No. 16、7-22、2018年