広島を走る西鉄の電車
2025/11/15
No. 119 令和7(2025)年11月14日
先日、出張で広島を訪れた際、新幹線の改札口を抜けてすぐの場所で、路面電車が発着しており驚きました。駅ビル2階に路面電車が乗り入れるのは、日本初とのことです。
北九州でも平成12(2000)年まで、路面電車が運行されていました。実は、北九州で使用されていた車両が、現在も広島の街中を走っています。

西日本鉄道502号
(西鉄北九州営業局電車部砂津営業所『記念アルバム 昭和29年12月』より一部抜粋)
西日本鉄道から広島電鉄に移籍した車両は、昭和23(1948)年に製造された二軸ボギー電動客車500形の501号、502号、504号です。西鉄500形は、戦後の輸送力不足を解消するために製造された運輸省規格型電車でした。車体長13.6m、定員80名もの大型車で、中央に両開き扉を備え3扉で運用されました。しかし、車体が長いために門司方面の急カーブ区間に入線できず、昭和28(1953)年から翌年にかけて、中央扉を埋めて2扉化、車体の前後を絞るなどの改造を経て、全線の運用を可能にしました。
昭和50(1975)年11月、西鉄福岡市内線の第一次廃止に伴い、ワンマン化された車両が大量に北九州線へ転入してきたため、余剰になった車両を払い下げました。広島電鉄へ移籍した500形は、昭和52(1977)年2月より、それぞれ広島電鉄601号、602号、603号(のち601号に改番)として使用されました。そのうち現在は、602号のみ稼働しています。
(学芸員M)
【参考文献】
飯島巌ほか『私鉄の車両3 広島電鉄』(保育社、1985年)
飯島巌ほか『私鉄の車両9 西日本鉄道』(保育社、1985年)
西日本鉄道株式会社編『軌跡 西鉄北九州路面電車が走った81年』(西日本鉄道株式会社、1992年)