北九州市平和のまちミュージアム
  • 営業時間 9:30 ~ 18:00
    入館は 17:30 まで

    学芸員日記

    番外編1「タイトルに込めた“決意” ifの体験」

    2023/07/07

    連載コラム『想い つなぐ』

    ★西日本新聞 北九州・京築版 2023年5月18日(木)朝刊 18面掲載★

     1945(昭和20)年8月6日に広島、3日後の8月9日に長崎へと原子爆弾が投下されたという歴史は、多くの人が学校教育等で学んだことでしょう。では8月9日に原子爆弾を搭載したB29が、長崎より先に小倉に飛来していた事実は、どのくらいの人に知られているでしょうか。
     米軍は8月9日の原爆投下第1目標として、西日本最大級の兵器工場であった小倉陸軍造兵廠を指定していました。しかし、前日の八幡大空襲による煙ともやで小倉上空は視界が悪く、原爆投下を断念したといわれています。
     もし、時間や風向きなど何か少しでも状況が異なっていたら、長崎ではなく小倉に投下されていたかもしれません。戦後、小倉では「もし小倉に原爆が落とされていたら、あなたは生まれていなかった」と、「if(もしも)」の体験として原爆が語り継がれています。
     平和のまちミュージアムは、このような歴史的な「場」である小倉陸軍造兵廠があった敷地の一角に立っています。さらにミュージアムは、さまざまな記憶や想いをつなぎとめる「場」とも言えます。そして、その「場」を構成するものとして展示物があります。
     しかし、その「モノ」だけで全てを語ることはできません。資料に意味付けをして何かを伝えようとするわれわれ学芸員や、陳列されたモノから何かを読み取ろうとする人がいてはじめて、「展示」が成立すると考えます。展示物に秘められた過去の記憶が発する声を聞いて、見て、感じる。そして、感じたことを周りの人へ伝えていくことで、やがて、それが社会へと広がり、さらには時を超え、未来へとつながっていく―。
     そういったさまざまな「想い」を「つなぐ」、はじめの一歩を発信していこうという決意を、この連載コラムのタイトルに込めています。
     遠くない未来、戦争を知らない世代が戦争を知らない世代に、戦争や平和を伝えていかねばならない時代がきます。北九州にはifを想像できる礎があります。まずは「想い」を見つけてみませんか。平和のまちミュージアムで、あなたを待っています。

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