北九州市平和のまちミュージアム
  • 営業時間 9:30 ~ 18:00
    入館は 17:30 まで

    学芸員日記

    若戸大橋がつないだ若戸博

    2025/10/11

    No. 117 令和7(2025)年10月11日

     昭和37(1962)年9月28日~11月25日、「若戸大橋完成記念 産業・観光と宇宙大博覧会(通称:若戸博)」が催され、59日間の会期中に約141万人が来場しました。この博覧会は若松・戸畑両市の間に建設された完成当時、東洋一の吊橋・若戸大橋(若戸大橋については、学芸員日記No.60を参照)の完成を祝い、両市と福岡県の共催で実施されました。
     会場は、世界の宇宙開発をテーマとした戸畑会場(若戸大橋の戸畑側橋脚一帯)と、郷土の文化展示や観光をテーマとした若松会場(高塔山公園一帯)に分けられ、両会場の周遊が観光コースとなりました。戸畑会場で最大規模となったアメリカ館では、長さ30mもの実物大バンガードロケット模型が展示され、人気を博しました。若松会場となった高塔山公園は、昭和14(1939)年に軍用地として買収され、山頂には高射砲陣地が築かれていました。そのため自然樹木が多く残っており、大規模な植樹をする必要なく用地を転用できました。

    若戸博パンフレット(平和のまちミュージアム所蔵)

     また、毎日新聞社とRKB毎日放送は、「北九州市の将来を予想した“夢の構想図”」を一般から募集し、有識者の知見と合わせ、若松会場の総合開発郷土館にて公表しました。同館は当初、若松・戸畑のPR館として準備されていましたが、北九州五市合併の実現が近づいたために、合併の意義と開発の諸問題を考える場として機能させることに転換しました。北九州市夢の構想パノラマでは、小倉港を望む場所にスペースニードルのようなランドマークを設置、響灘埋立地に国際空港を誘致などさまざまなアイディアが語られました。
     若戸博の戸畑会場跡は現在、戸畑衹園大山笠の「お汐井汲みの場」や大橋公園などに整備され、彫刻家・中野素昂によるブロンズ像《大気》や若戸博記念碑が建てられています。若松会場跡の高塔山公園には、博覧会でも使用された展望台、河童封じの地蔵尊、野外音楽堂などが残っています。

    (学芸員M)

    【参考文献】
    若戸博会誌編纂事務局長 小峰歳雄・橋本周一郎編『若戸大橋完成記念 産業・観光と宇宙大博覧会』(若戸博協会、1964年)

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