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    最新の学芸員日記

    港の奏で ~門司高等女学校の鼓笛隊~

    2024/11/08

    No. 101 令和6(2024)年11月8日

    県立門司高等女学校鼓笛隊(『門司市史』第二集より)

     現在、平和のまちミュージアムでは、企画展「学徒らしくあれ ~旧制中等学校の戦争史 門司・小倉編~」を開催中です。そのなかで、県立門司高等女学校(戦後、県立門司北高等学校)の鼓笛隊こてきたいについて、紹介しています。鼓笛隊とは、太鼓や笛を中心に構成された楽器を、行進しながら演奏する楽隊のことをいいます。
     県立門司高等女学校(以下、門司高女)の鼓笛隊は、昭和13(1938)年6月に編成されました。結成の目的として、「聖戦下銃後女性の志気を鼓舞して女学生として優雅な銃後統制団体を組織」するということが挙げられており、前年7月から始まった日中戦争の影響がうかがえます。
     当時の門司港は、戦地へ出征する軍隊や、戦闘で負傷して帰還した兵士たちなどで賑わいを見せていました。門司高女鼓笛隊は、結成された翌月の12日に出征兵士の歓送迎に初参加して以降、頻繁にこれに参加し、愛国行進曲や愛馬進軍歌などの楽曲を演奏しました。また、小倉陸軍病院に入院していた傷病兵を訪問し、慰問のための音楽を演奏しています。学校行事として、武運長久祈願のための神社参拝を行う際には、生徒たちの先頭に立って音楽を奏でました。「門司の街を演奏しながら歩く鼓笛隊は、市民の方々にも愛され、名物的存在」(『創立百周年記念誌 門浪』)だったといいます。
     厳しい指導者のもとで鍛えられ、おびただしい数の出征兵士の歓送迎に参加した鼓笛隊は、昭和16(1941)年11月に行われた全国吹奏楽大行進大競演会(現 全日本吹奏楽コンクール)の鼓笛隊・学生部門で1位(文部大臣賞)を獲得し、その名声を全国的なものにしました。
     県立門司高女以外にも、市立門司高等女学校(戦後、県立門司南高等学校へ統合)で、鼓笛隊が編成されています。出征部隊を見送った高等女学校の鼓笛隊は、北九州の他の街では見られない、門司ならではの光景だったといえるでしょう。

    (学芸員O)

    【参考文献】
    『門司市教育 皇紀二千六百年記念号』(門司教育会、1941年)
    『門司市史』第二集(門司市役所、1963年)
    福岡県立門司北高等学校『創立百周年記念誌 門浪』(福岡県立門司北高等学校、2008年)

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