北九州市平和のまちミュージアム
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    学芸員日記

    卯年によせて~ウサギの世話は少国民の務め~

    2023/01/13

    Vol.49 令和5(2023)年1月13日

     今年は卯年。ウサギはその愛くるしい姿と飼育のし易さから、ペットとしても人気が高い動物です。小学校でウサギを飼育していたという方もいると思いますが、なぜ学校でウサギを飼うようになったのか考えてみたことはありますか。

    『写真週報』第188号(一部抜粋)

     昭和15(1940)年9月に発行された『写真週報』第134号では「(うさぎ)の皮の総動員」、翌年10月に発行された『写真週報』第188号では「兎は大切な軍需品(ぐんじゅひん)」という特集が組まれています。戦時下ではさまざまな物資が不足し、毛皮も例外ではありませんでした。昭和13(1938)年には「皮革使用制限規則」や「皮革配給統制規則」が定められ、毛皮は国による統制の対象となりました。また、食糧が不足したために、飼料を必要とする家畜への疑義も唱えられていました。その点、ウサギの毛皮は兵隊用の防寒着として、肉は食糧として、余すことなく使用できるため、利用価値の高さが注目されたのです。

     昭和19(1944)年には、「(ぐん)()の飼育の奨励」を文部省および農商省がすすめ、全国すべての国民学校、旧制中学校などの生徒たちによるウサギの飼育がはじまりました。当時、ウサギの飼育数は日本全国で300万匹でしたが、これを1160万匹に増やす計画が立てられ、各家庭においても4匹以上のウサギを飼うことが奨励されました。

     軍用兎の毛皮が不足すると、家庭で飼われていた犬や猫の献納(けんのう)が本格化しました。昭和15(1940)年に組織された大政(たいせい)翼賛会(よくさんかい)のもと、隣組(となりぐみ)制度による住民の相互監視が行われる中、泣く泣くペットを差し出したという家も多かったそうです。

    ウサギや犬、猫以外にもさまざまな動物が戦争による影響を受けました。戦争の影にもの言わぬ犠牲者がいたことを、私たちは忘れてはなりません。

    (学芸員M)

    【参考文献】

    鈴木哲也「昭和10年代の理科教育における『学校飼育動物』を用いた授業内容と実践記録―ウサギを事例として―」(『東京未来大学研究紀要』7巻、2014年)

    東海林次男『日本の戦争と動物たち 2戦争に利用された動物たち』汐文社、2018年

    西田秀子「アジア太平洋戦争下、犬猫の毛皮供出、献納運動の経緯と実態―史実と科学鑑定」(『札幌市公文書館事業年報』第3号別冊、2016年)

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