吉田初三郎の鳥瞰図
2022/07/08
Vol.23 令和4(2022)年7月8日(金)
吉田初三郎(1884~1955)は、大正から昭和にかけて多くの鳥瞰図(上空から斜めに見下ろした視点で描く地図)を描いた絵師です。各地の鉄道会社や地方自治体からの依頼を受けて大量に作品を生み出し、「大正広重」と呼ばれました。
「戦前の北九州」ゾーンには、九州電気軌道(九軌、のちの西鉄北九州線)沿線の様子を描いた初三郎の絵図を展示しています。これは昭和6(1931)年の作品で、裏面の名所案内とともに観光客向けに作成されたものでした。太い赤線で表されているのが九軌の路線で、門司から小倉・八幡を通り折尾までの本線と、大門から戸畑、幸町から中央区(中央町)までの支線がありました。
この地図を見ると、当時の北九州の様子を感じ取ることができます。
門司や若松付近に大量に描かれた船からは、両市の港としての賑わいが見えてくるでしょう。八幡には、数多くの煙突を持つ製鉄所の工場が描かれ、奥には河内貯水池と「めがね橋」が見えています。戸畑付近には、現在埋め立てで失われてしまった海水浴場が描かれています。小倉の街には、浅野製鋼所や東洋陶器などの工場、裁判所やグラウンドなどの施設が確認できます。
遠くの地形になればなるほどデフォルメされており、遠くは阿蘇山や長崎、安芸の宮島まで描かれています。また、黒崎から中間、赤間、福間を通って博多までつながる路面電車の予定線などが記入されており、壮大な鉄道計画があったことが伺えます。
ご来館の際はぜひご覧ください。