寄贈された資料が展示されるまで
No. 71 令和5(2023)年8月18日
平和のまちミュージアムには、市民の方からの寄贈希望の品物が持ち込まれることがあります。そういったモノが実際に展示されるまで、学芸員が行う作業の一部をご紹介します。
私たち学芸員は、まず寄贈者の方へ聞き取りを行います。持ち込まれたモノがどういった方に関係するものなのか、その方はどういった背景を持つ方なのか、それがなぜ生み出され、なぜ保存されてきたのか…。そういった事柄を詳しく聞き取り、記録していきます。これは、資料を展示する際の基礎的な情報になります。この作業を怠ったり、情報が得られなかったりすると、その資料は単なる“モノ”にすぎず、当時を物語る資料にはなりません。
その後、持ち込まれたモノは、害虫を駆除する作業(燻蒸といいます)を行った後、仕分けし、一点一点の表題、作成者、内容などの情報をとり、目録を作成します。ミュージアムで所蔵している資料の全体像を踏まえ、一つ一つが持つ意味を調べて、資料としての意味づけを行っていきます。この作業の中で、ご家族からの聞き取りだけではわからなかった情報が判明することも少なくありません。例えば、出征兵士の現地での状況や、家族間の細かいやり取りなど、現在では読み取りにくい、いわゆる「くずし字」等で書かれた資料を丹念に読み解くことで、貴重な情報を得ることができます。
実際に資料を展示する際には、図書館の文献等を渉猟(読みあさること)し、さらに細かく内容について調べていきます。その資料がいかなる時代背景のもとで、いかなる文脈で生み出されたのか、その資料が歴史的にどのような意味を持つのかなどを調べ、展示資料としていくのです。
学芸員は、来館者の方に見える範囲以外にも、日ごろこういった作業を行っています。寄贈された資料は、学芸員の地道な作業により命をふきこまれ、みなさんの目に触れるようになるのです。
※平和のまちミュージアムでは、手紙、日記、写真、生活道具など、戦前から戦後の暮らしや、社会の様子が分かる資料の寄贈を募集しています。詳細は、こちらをご覧いただくか、☎093-592-9300まで。
(学芸員O)