展示資料入れ替え ~小倉常盤座のポスター~
No.110 令和7(2025)年4月11日
先日、「戦前の北九州」の展示を一部入れ替えました。今回新しく展示した資料は、小倉常盤座で上映された映画のポスターです。
ポスターは、大正14(1925)年に日本で公開された「バグダッドの盗賊」というサイレント映画の宣伝です。この映画は、「千夜一夜物語」から脚色されており、バグダッドのカリフの娘と恋に落ちた泥棒の物語が描かれています。無声映画の上映は、解説者がスクリーンのわきにつき、ナレーションや台詞を付けていました。

小倉常盤座のポスター(松永文庫所蔵)
常盤座は、もともと演劇場として建設されましたが、活動写真の台頭により、昭和6(1931)年に映画館へ転向しました。一方、活動写真巡業隊による興業は、明治38(1905)年から行っており、明治31(1898)年に小倉で初めて映画を上映した稲荷座に続き、比較的早くから映画を上映していました。
『福岡県統計書』によると、昭和15(1940)年当時、小倉には8館の映画館があり、常盤座はその中で最も入場者数が多い映画館でした。終戦時に残っていたのは4館で、そのうちの1つであった常盤座も戦禍に巻き込まれていたことが市民の手記に残っています。
その夜眠っていると、警戒警報が鳴り響く中を大きな浴衣を引きずり引きずり映画館「常盤座」の地下までたどり着きました。夜明けとなったので、ホールまで出て見ると死体がありました。知り合いのお姉さんが弟を背負ったまま亡くなった死体や数十体の死体を前に子供心に顔を背けました。
(当時、北方国民学校(現 北方小学校)4年生)
この手記の抜粋が、常設展示に使われていますので、どこにあるか探してみてください。
(学芸員M)
【参考文献】
北九州市総務局総務課編『後世に語り継ぐ北九州市民の戦争体験』北九州市、2016年
北九州市史編さん委員会編『北九州市史 近代・現代』教育・文化、北九州市、1986年
福岡県警察部編『福岡県統計書 昭和15年 第4編 警察衛生ノ内』(警察)、福岡県、1942年