戦時期の国策グラフ雑誌公開
No.74 令和5(2023)年10月6日
現在、平和のまちミュージアムのエントランスで、戦時期の国策グラフ雑誌『写真週報』の複製を一部特別公開しています。
『写真週報』は、日中戦争勃発から約半年後の昭和13(1938)年2月16日創刊、終戦直前の昭和20(1945)年7月11日(第374・5合併号)廃刊まで、計370冊刊行されたグラフ誌です。先端的な写真技法を駆使し、戦地の様子や兵士の姿を知らせるメディアとして、また、銃後の人びとの生活を多彩な特集で取り上げ、団結を高めるメディアとして人気を博しました。
当時、グラフ誌で最も人気だった『アサヒグラフ』の発行部数が数万部といわれるなか、『写真週報』は昭和16(1941)年3月時点で約20万部と、圧倒的な発行部数を誇りました。その理由には、アサヒグラフが80銭、新聞朝刊が75銭という価格の中、10銭という破格の定価であったこと、戦時における用紙不足による競合他紙の廃刊が相次ぐなか、20ページ前後というボリュームを保ったこと、政府(内閣情報部、のち内閣情報局)による刊行物であったこと等が挙げられます。
戦時期には各号20~40万部が発行され、一冊が10名ほどで回覧されたことから読者は200~300万人程度であったと推計されています。とりわけ地域・学校・職域単位での啓発宣伝のツールとして用いられました。
この『写真週報』が北九州市立大学に全巻保管されていたため、平和のまちミュージアムで資料を借り受け、全巻カラー複製を行いました。ミュージアムでは、これまでも企画展等で一部抜粋して公開していましたが、まとまった冊数を公開するのは初めてです。この機会にぜひ、手に取ってご覧ください!
(学芸員M)
【参考文献】
玉井清編『戦時日本の国民意識―国策グラフ誌『写真週報』とその時代』慶應義塾大学出版会、2008年