資料を読み解く力を養う~平和学習の向こう側へ~
Vol.51 令和5(2023)年1月27
先日、北九州市立大学文学部主催の公開講座「語られる戦争、つなぐ平和~北九州市平和のまちミュージアムの挑戦~」を開催いたしました。当日会場に足を運んでくださった方が120名ほど、オンライン視聴の申し込みと合わせると300名ほどの方が講座を聞いてくださったとのこと、誠にありがとうございました。
今回の講座を通して、戦争を遠い過去の出来事ではなく、自分事として捉えてもらうことを目的としていましたが、それが達成されたと感じられる声をアンケートで多くいただき嬉しい限りです。
平和学習においては、いささか早急に「戦争はいけない」、「平和が大切」といった結論を導きだし、そこから具体的に何をどうすべきなのか考えることを放棄しがちです。例えば、スタディーツアーでミュージアムを訪れてくれる小学生たちにも、その傾向がみられます。見学後、「平和の樹」という展示に感想や平和への想いを書いてもらうのですが、ほとんどの子が前述のような“正しい”結論を書きます。あるとき、それを見ていた先生が子どもたちに向かって「平和な世界は誰が創っていくの?」と諭している場面に出くわしました。子どもたちは押し黙ってしまいましたが、きっと平和学習の要はそこにあるのだと思います。
ミュージアムや遺構、記念碑というのは、一定のやり方で集合的記憶を繋ぎとめる「場」です。展示物というのは、その「モノ」だけでは語らず、それを展示して何かを伝えようとする人、それを見て何かを感じ取ろうとする人、その人が発する声や語りです。結論ありきではなく、そこに至るまでの意味の生産過程を読み解くリテラシーを育ててみましょう。そして、戦争体験や記憶の向こう側に、どのような社会が生み出されるべきか、考えてみてください。事実とそれをどう解釈するのかは別問題であって、これはまさに未来形成に関わることなのです。
戦争や平和のリアルを掴む「場」として、リテラシーを磨く「場」として、平和のまちミュージアムをどんどん活用してください!皆様のご来館を心よりお待ちしています。
(学芸員M)