造兵廠の跡地を利用した小倉大博覧会
No. 113 令和7(2025)年6月6日
現在、大阪の人工島・夢洲で開催中の「2025年日本国際博覧会(公式略称:大阪・関西万博)」。世界最大級の木造建築物である大屋根リングをはじめ、各国の多彩なパビリオンが連なり、連日の盛況ぶりがうかがえます。
ところで、ここ小倉でも博覧会が開催されていたことはご存じでしょうか。昭和35(1960)年3月20日~5月22日、小倉市制60周年記念事業として「伸びゆく北九州 小倉大博覧会」が開催されました。小倉大博覧会は、福岡県と小倉市による共催で、4大工業地帯の一つとして北九州の現状を紹介するとともに、北九州5市合併を促進することが目的とされました。
会場には小倉陸軍造兵廠の敷地165,000㎡が転用され、会場建物50,000㎡のうち、造兵廠の建物14棟46,300㎡がそのまま利用されました。現在、平和のまちミュージアムがある場所付近では、米軍による接収中に建設された教会の建物を利用し、小倉市と姉妹都市であるタコマ市(現在は北九州市と姉妹都市)がタコマ館を出展していました。展示の企画・構成などはすべてタコマ市が行い、インディアンの民芸品、メイフィールドダムと発電所模型など、タコマ市を紹介する出品物が並びました。

改装前の教会(上)とタコマ館(下)

また、小倉大博覧会に合わせ、小倉城の天守閣が再建され、城内には九州初となるジェットコースターが建設されました。全長450mのコースの大半が、旧師団長官舎の日本式庭園内(現在の小倉城庭園)を走り、景観が非常に良かったそうです。平和のまちミュージアム来館者の中には、当時、恋人とこのジェットコースターに乗ったという素敵な思い出をお話してくださる方もいました。博覧会の終了後も、ジェットコースターはしばらく営業を続けましたが、昭和45(1970)年に市庁舎建設のため撤去されました。
小倉大博覧会は、会期64日間の間に1,150,000人(1日平均18,000人)が訪れ、盛況を博しました。ミュージアムでは、小倉大博覧会のパンフレットや正門の写真も展示していますので、ぜひ見に来てください。
(学芸員M)
【参考文献】
『伸びゆく北九州 小倉大博覧会 会誌』(小倉市役所、1961年)