北九州市平和のまちミュージアム
  • 営業時間 9:30 ~ 18:00
    入館は 17:30 まで

    学芸員日記

    紙芝居と戦争

    2022/09/09

    Vol.32 令和4(2022)年9月9日

     先日、新しく寄贈いただいた資料を「戦争と市民の暮らし」ゾーンに展示しました。昭和17(1942)年に日本教育紙芝居協会から出版された、新田(にった)(よし)(さだ)を題材とした教育紙芝居です。

     戦時中、日本教育紙芝居協会を中心に、戦意(せんい)高揚(こうよう)報国(ほうこく)を描いた紙芝居が1000種類以上も制作されました。同協会は昭和13(1938)年7月20日に発足、当初は紙芝居に関する基礎的研究と教育紙芝居の出版・普及活動を行うことを目的にしていましたが、直後に戦時下に入ったことで、国策(こくさく)のためのプロパガンダとして利用されました。当時、紙芝居は1作品当たり数百から一万部発行され、子どもを中心に国民を総力戦(そうりょくせん)へと扇動(せんどう)する役割を果たしたのです。

     終戦後は、戦争犯罪の追及を恐れた紙芝居編集者により焼却されたり、GHQにより検閲・処分されたりして、多くの資料が失われてしまいました。

     当館で展示している紙芝居には、新田義貞の天皇に対する忠誠心が描かれています。新田義貞は、鎌倉時代後期から南北朝時代のはじめにかけ活躍した武将の一人です。後醍醐天皇による建武の新政樹立の立役者となり、南朝の総大将として忠節を尽くしました。展示資料には、「君(天皇)の為、国の為に捧げし義貞の真心は、美しい花として、日本人の魂の中に永久に香り、永久に咲いている。」という記載があり、戦争下において国民の心構えを啓発していることがうかがえます。

     現在でも紙芝居は幼稚園・保育園をはじめ、高齢者施設、学校、図書館などで広く親しまれています。戦後は、戦争を二度と繰り返さないことを願う平和紙芝居も発行されるようになりました。当館の書籍コーナーでも「ヒロシマ・ナガサキ二重被爆」、「嘉代子桜」などの平和紙芝居を収蔵しています。こちらはぜひお手に取ってご覧ください!

    (学芸員M)

    【参考文献】

    神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター「戦時下日本の大衆メディア」研究班代表・安田常雄編「国策紙芝居からみる日本の戦争」勉誠出版、2018年

    原田広「戦意高揚紙芝居コレクションにみる戦時下用語―「登場人物編」その1」『ニューズレター非文字資料研究』No. 44、17-24、2020年

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